アジア・アフリカ地域研究研究科アフリカ地域研究専攻 アフリカ地域研究資料センター
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牛を迎える(宮木 和) April 2014第130号

「俺の牛だよ。オジが牛をくれたんだ。」
ムンガタは牧畜民タトゥルの、20歳過ぎの男。彼は、新しい家を別の村につくっていて、オジにもらった50頭の牛と妻子とともに、そこで住み始めるのだと語ってくれました。

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「新しい家」に牛を移動させる途中、友人の村に滞在しました。目的地まではあと少し。ここまで60 kmの距離を、半乾燥地の灌木林を通ってきました。放牧を友人に任せた彼は、毎朝、放牧に出る牛を見送り、夕方には草を食べて帰ってきた牛を迎えにいき、何を考えているやら牛をじっと眺めていました。私にはその姿は希望に満ちているように見えました。

しかし、のちに当のオジに事情をきくと話が違いました。自分の牛の一部の管理をムンガタに任せただけで与えたわけではないというのです。そして「新しい家」とは、ムンガタとその妻子をすまわせ、オジの牛を飼養させるためにオジが購入した家だったのです。

オジの真意も、今後ムンガタがあの牛を手に入れるかどうかもわかりません。それでも、「俺の牛」を迎えるムンガタの姿を思い出すと、僕にはあの牛たちが彼の牛になっていくように思えてなりません。
(撮影地:タンザニア中央部シンギダ州)

※『アジア・アフリカ地域研究情報マガジン』April 2014 第130号より転載。

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