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ニジェールの概要

ここでは、ニジェールを研究するうえでの魅力と問題点を紹介します。

乾燥地がひろがる自然:サバンナから砂漠まで

アフリカ大陸のサハラ砂漠の南縁には、サヘル帯と呼ばれる地域が広がります。
ニジェールも、サヘル帯に位置する国のひとつです。アフリカのサヘル帯では、ギニア湾に発達するギニア・モンスーンの影響を受けて、ITCZ(熱帯内収束帯)が北上し、雨が降ります。北に向かうにしたがって降水量が減少し、サハラ砂漠にいたります。サヘル帯における年間の降水量は150―500mmであり、サヘル帯は半沙漠・ステップ(150―300mm)、乾燥サバンナ(300―500mm)、スーダン・サバンナ(500―1000mm)に大きく分けることができます。サハラ砂漠は150mm未満の沙漠気候に属します。年間降水量が150mm以下の地域で古砂丘が移動しはじめることから、150mmの等雨線を砂漠化前線と定義されることもあります。
このような降雨帯は、ユニークなエコロジカル・ゾーンをつくります。サヘル帯では、東西方向に移動しても、それほど自然景観は大きく変化しませんが、南北方向へ移動すると変化します。

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さまざまな生き方をする人々:
民族色と地域文化の豊かさ

降雨がつくりだすエコロジカル・ゾーンのちがいは、人々の生活に大きな影響を与え、人々は地域の環境におうじて生活しています。乾燥の強い沙漠や半沙漠・ステップにはラクダを中心とする家畜を飼養するトゥアレグやアラブ系の人々が遊牧生活をおくっています。牧畜を営む人々は、雨季にサハラ砂漠の方へ北上し、乾季になって乾燥が強まると、南へ移動します。乾燥サバンナは、良好な牧畜地域であり、フルベ(フラニ)の牧畜民がウシを中心とする家畜群を飼養しています。フルベは、遊動する人々と農村に定着する人々がいます。
また、天水でトウジンビエやソルガム、ササゲ、ラッカセイを栽培する農耕民、ハウサやザルマ、カヌリなどの人々もいます。スーダン・サバンナ帯になると、ソルガム、トウモロコシ、キャッサバ、ヤムイモ、ラッカセイが天水で栽培されます。厳しい自然環境のなかで、たくましく生きる人々の姿があります。

乾燥地がひろがる自然

ニジェールが抱える主な問題群

1)砂漠化問題と食料不足

砂漠化の問題―土地の荒廃、土壌の劣化は、作物や家畜の生産の低下をもたらし、人々のあいだに貧困や食料不足の問題が発生しています。食料不足の発生は貧富の差を拡大させ、西アフリカ諸国の政治状況を不安定にしています。クーデターが起こり、軍事政権が誕生してきました。貧富の差や食料不足、貧困の蔓延は、テロ活動の原因ともなっています。砂漠化対策は、ニジェールの重要な国家課題となっています。
『World Development Indicators 2012 (以下、WDI 2012)』によると、ニジェールでは5才未満の子どものうち、男の子は42.1%、女の子は37.5%が低体重です。荒廃しやすい土地、降雨の大きな変動にともなう干ばつの発生により農業生産は大きく変動します。そして、農業生産の減少は食料不足を引き起こします。毎年のように、農村には食料緊急援助が届けられ、国際的な支援がつづけられていますが、砂漠化の対処技術の開発と安定的な食料生産は重要な課題となっています。

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2)降雨量の変動と干ばつの発生

gaiyo4近年、世界各地で異常気象が報告されていますが、サヘル帯もその例外ではありません。2011年の雨季には8月中旬以降、雨が降らず、農村では作物の収量が低下し、人々は食料不足に苦しみました。翌年の2012年の雨季には、逆に雨が降りつづき、大雨のために家屋に損害が生じ、作物生産にも悪影響がでました。サヘル帯は、もともと降水量の変動が大きい地域ですが、その振幅が人々の生活に大きな影響を与えています。

3)急速な人口増加

gaiyo5サヘル帯では人口増加率が高く、ニジェールの人口増加率は年率で3.7%です。この数値は非常に高く、20年で人口が倍増する驚異的なペースとなっており、人口が急速に増加しています。2010年に1500万人だった国内人口が、2050年には6000万人にまで増加すると予想されています。『WDI 2012』によると、合計特殊出生数―女性が生涯に産む子供の数は、1990年に7.8、2010年には7.1と、若干、低下しているものの、依然、高い水準にあります。急速な人口増加は、農耕地の拡大、家畜頭数の増加、都市における消費の拡大を引き起こし、自然環境の大きな負荷となっています。

4)貧困問題

gaiyo62013年に国連が発表した人間開発指数(Human Development Index:HDI)は、新しい指標によって算出されるようになりましたが、ニジェールは対象国186カ国のうち最下位でした。ニジェールはそれまでも、毎年のように、最下位もしくはワースト3にランキングされてきました。新しい指標を算出するのに使用したデータを紹介すると、母体死亡は10万人あたり590人、15-19才女性の特殊出生数193.6、国会議員に占める女性議員数13.3%、中等教育に達した25才以下人口 男性7.6%、女性2.5%といったデータが並びます。
また、世界銀行の『WDI 2012』によると、1日あたりの所得が1.25ドル未満の人口は国民の50.2%、2ドル未満の人口は75.3%に該当します。所得が多い方が豊かであるとは必ずしも言えませんし、少ないことが貧しいとも言い切れませんが、ニジェールについては、このようなデータが存在します。

5)さいごに

ニジェールが必ずしも貧しい社会だと決めつけて研究をしているわけではありません。しかし、これらの指標が社会の一面を表していることも事実です。これらの問題に、どのように立ち向かうのか、われわれは考えていかねばなりません。